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「訓練は終わったけれど、このあとは誰に相談すればいいんだろう」
「就職が決まらないまま卒業日が近づいてきて、不安でしかたない」
就労移行支援の卒業が近づくと、こうした気持ちになる方は少なくないと思います。
私は社会福祉士・精神保健福祉士として、就労移行支援の現場で10年働いてきました。その経験から思うのは、卒業のタイミングでしんどくなるのは「就職が決まっていないこと」そのものだけではなく、相談できる相手がいなくなったように感じることでもある、ということです。
この記事では、卒業の前後にやっておきたいことを5つに整理しました。制度の説明から入るのではなく、「明日から何をすればいいか」が見える形で書いています。
障害者雇用で就職して定着するまでの全体像を先に知りたい方は、障害者雇用で正社員になるためのロードマップ|就労移行支援を経て定着するまでの7ステップ もあわせてご覧ください。
就労移行支援を卒業すると「相談先がなくなる」と感じることがある
就労移行支援は、利用者ごとに標準期間(24か月)の範囲内で利用期間が設定される仕組みです(厚生労働省の資料による)。期間が来れば、就職が決まっていてもいなくても、卒業のタイミングは訪れます。
ただ、卒業=すべての支援が終わる、というわけではありません。
厚生労働省が示す就労移行支援のサービス内容には、「就職後における職場への定着のために必要な相談その他の必要な支援」も含まれています。卒業後にどこまで関わってもらえるかは事業所ごとに違いますが、まずは通っている事業所に直接聞いてみるのが、いちばん早い確認方法だと思います。
そのほかに、卒業後の相談先となる可能性があるのは次のようなところです。
- 障害者就業・生活支援センター……就業面と生活面の支援を一体的に行う機関です。厚生労働省によると、令和8年4月1日時点で全国に340か所設置されています
- 地域障害者職業センター……専門的な職業リハビリテーションサービスを行う機関で、各都道府県に設置されています
- ハローワーク……厚生労働省は、障害のある求職者の方向けに「専門的に相談にのる窓口」を設置し、「障害に理解のある専門の相談員」を配置しているとしています。窓口の名称は地域によって異なります
- お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口
- 主治医や、通院先の医療機関の相談窓口
ここで一点、誤解が起きやすいところをお伝えしておきます。
「就労定着支援」という障害福祉サービスがありますが、これはすでに一般就労し、働き続けている期間が6か月を経過した方が対象とされています(厚生労働省)。つまり、まだ就職が決まっていない段階の卒業では、このサービスの対象にはなりません。「卒業したら定着支援があるはず」と考えていて、あとから対象外だと分かる、というズレが起きやすい部分です。
卒業前後にやっておきたい5つのこと
1|卒業後の相談先を確認しておく
卒業してから探すより、在籍しているうちに、担当の支援者と一緒に確認しておくほうがスムーズです。
聞いておきたいのは、たとえばこんなことです。
- 卒業後も、この事業所に相談していいのか
- 相談していい場合、どんな内容までなら対応してもらえるのか
- 対応が難しい内容は、どこに繋いでもらえるのか
以前に書いた就労移行支援10年で見てきた「働き続けられる人」の共通点 という記事でも触れましたが、私が現場で見てきた中で、長く働き続けられた方に共通していたことのひとつは「困ったときに、小さく相談できる」ことでした。
相談先を先に決めておくことは、その「小さく相談する」を、卒業後も続けられるようにする準備だと考えています。
2|手帳・受給者証・必要書類などを整理する
書類まわりは、種類によって扱いが違います。一律に「期限を確認しましょう」とは言えないので、自分の場合はどうかを確かめておくのが確実です。
- 障害者手帳……厚生労働省は身体障害者手帳について「原則、更新はありませんが、障害の状態が軽減されるなどの変化が予想される場合には、手帳の交付から一定期間を置いた後、再認定を実施することがあります」としています。療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の更新の要否や手続きは、お住まいの市区町村の担当窓口でご確認ください
- 障害福祉サービス受給者証……就労移行支援は標準期間(24か月)の範囲内で利用期間が設定されます。自分の支給決定がいつまでの内容になっているかを、事業所か自治体の窓口で確認しておきましょう
- 就職活動で使う書類……訓練中の記録、実習の評価、主治医の意見書など。どこに何があるかを整理しておくと、この先どの窓口に相談するときも話が早くなります
3|自分の配慮事項を、対処法とセットで言葉にしておく
配慮事項の整理というと、「障害名」と「症状」を書けば済むと思われがちです。ただ私は、支援の場面ではそれだけで終わらせないことを大事にしていました。
具体的には、次の3つをセットで整理していきます。
- どんな場面で困りやすいか……「発達障害だから」ではなく、「複数の指示が同時に来ると、優先順位が分からなくなる」というところまで具体にします
- そのとき、自分ではどう対処できるか……「メモを取って、あとで順番を確認する」「その場で一つずつ聞き返す」など、自分でできる工夫を書き出します
- それでも職場にお願いしたい、具体的な配慮は何か……1と2を踏まえたうえで残るものが、本当に必要な配慮です
この順番で整理することには意味があります。「配慮してほしいこと」だけを並べた状態と、「自分の特徴と対処法を説明したうえで、必要な配慮を伝えられる状態」とでは、相手に伝わり方がまったく違うからです。
前者は、相手からすると「何をどこまで用意すればいいのか」が分かりません。後者は、本人がすでに自分を理解していて、そのうえで足りない部分だけを求めていることが伝わります。面接の場でも、入社後に上司へ説明する場面でも、後者のほうが話が進みます。
長く働き続けられた方に共通していたことのひとつに、「調子が悪い日があることを、自分で分かっている」というものがありました。この整理は、その自己理解を、他の人にも伝わる形に翻訳する作業だと言えます。
そしてこれは一人でやるより、支援者と一緒に作るほうが精度が上がります。自分では当たり前になっていて気づかない部分を、外から指摘してもらえるからです。その意味でも、在籍しているうちが取りかかりどきです。
4|就職活動の窓口を一つに絞りすぎない
就職活動の相談先には、公的なものと民間のものがあります。
- ハローワーク
- 障害者就業・生活支援センター
- 地域障害者職業センター
- 民間の転職エージェント(障害者雇用に特化したサービスもあります)
これらはどれかを選ばなければいけない、というものではありません。 見えている求人も、得意な部分も違うので、選択肢として並べて考えるほうが自然だと思います。
障害者雇用に特化した民間サービスとしては、dodaチャレンジやatGPといったエージェントがあります。詳しくは後半で触れます。
なお、複数の窓口を使う場合は、どこに相談しているかを、それぞれに伝えておくほうが整理しやすいと思います。同じ求人に別々のルートから応募してしまう、といった行き違いを避けやすくなります。
5|生活リズムと「働く準備」を卒業後も続ける
毎日通う場所がなくなると、生活リズムは崩れやすくなります。そして生活リズムが崩れると、面接の日程を組むこと自体がしんどくなっていきます。
ただ、ここで続けたいのは生活リズムだけではありません。就職することと、働き続けることは別だからです。支援の現場で、私が働き続ける準備として重視していたのは、次のようなことでした。
- 決まった時間に通う……行き先は就労移行支援でなくても構いません。図書館でも、地域の活動でも、「決まった時間に、決まった場所へ行く」という形が残っていることが大事です
- 報告・相談する練習をする……これは職場に入ってから急にできるようになるものではありません。家族でも支援者でも、誰かに状況を伝える習慣を切らさないことが練習になります
- 自分の不調の早期サインを把握する……眠れなくなる、食事が進まない、人と話すのが億劫になる。倒れてから気づくのではなく、その手前のサインを自分で知っておきます
- 必要なら、休む日を先に予定へ入れる……調子を崩してから休むのではなく、あらかじめ休みを組み込んでおく。これは就職してからも効いてきます
- できなかったことだけでなく、できたことも振り返る……振り返りが反省だけになると、続きません。「今日はここまでできた」を意識して拾い上げてください
もうひとつ、現場にいて重要だと感じていたのが、「分からないことを、分からないと言える」「困ったときに、助けを求められる」ということです。この2つは、スキルや経験よりも、働き続けられるかどうかに影響していたように思います。そしてこれも、卒業後の期間に練習できることです。
完璧にやろうとしなくて大丈夫です。「今日はしんどいから60点でいい」と自分に許可を出せる人ほど、結果的に長く続いていました。
卒業したのに就職が決まらないとき、焦って応募数だけを増やさない
卒業したのに決まらない時期は、どうしても「とにかく数を出さないと」という気持ちになります。ただ、応募数だけを増やすやり方は、あとでしんどくなりやすいと考えています。
理由は、「受かるかどうか」だけで求人を選ぶようになるからです。 そうすると、3で整理した自分の特徴・対処法・必要な配慮と、仕事内容を照らし合わせる作業が後回しになります。結果として、入ってから「思っていた仕事と違う」「この環境では続けられない」と分かることになりかねません。就職がゴールではなく、働き続けることがゴールだとすれば、これは遠回りです。
私が求人票を利用者の方と一緒に見るとき、少なくとも次の4点は確認する視点を持っていました。
- 実際に任される仕事内容……「事務業務全般」のような書き方では、何をするのか分かりません。一日の流れとして具体的に想像できるかどうかを見ます
- 必要な経験・資格……募集要件を満たしているか。満たしていない場合、それが必須なのか歓迎条件なのかを確認します
- 勤務時間や勤務環境……勤務時間、休憩の取り方、残業の有無、通勤の経路と所要時間。毎日のことなので、体力への影響がいちばん大きい部分です
- 応募書類や応募条件……何を準備する必要があるか。締切までに用意できるか
大事なのは、求人件数や給与などの条件面だけを見るのではなく、「この仕事を、自分は実際に続けられそうか」という視点で読むことです。求人票は、受かるかどうかを判断する書類である前に、続けられるかどうかを判断する材料でもあります。
そのうえで、3で整理したものを一覧にして、求人ごとに「問題なさそう/確認が必要/難しそう」の3つに分けてみてください。すべてが「問題なさそう」である必要はありません。「確認が必要」をそのままにして応募しないことが大切で、そこは面接や事前の質問で埋められます。
支援者に相談するときも、具体に落とすほうが話が進みます。「なかなか決まりません」だけだと、相手も一般論しか返せません。「この求人のこの部分が不安です」「この配慮を伝えるべきか迷っています」という形にして持っていってください。
一人で抱え込まないでください。私が現場で見てきた中で、苦戦していた時期に多かったのは、しんどいのに「大丈夫です」と言ってしまう状態でした。
卒業後に転職エージェントを使うなら
公的な支援と並行して、障害者雇用に特化した民間の転職エージェントを使うという選択肢もあります。代表的なのが、dodaチャレンジとatGPです。
以下は、それぞれの公式サイトで公開されている情報にもとづく紹介です。どちらも利用は無料で、障害者手帳を持っていることが前提のサービスです。
dodaチャレンジ
身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳のいずれかをお持ちの方が求人紹介の対象とされています。手帳をお持ちでない方も、申請中の場合は利用できる可能性があるとされています。年齢の制限は設けられていません。カウンセリングは「電話やオンライン、メール形式で、全国どこでもご相談に応じて」対応するとされており、対面の場合は東京本社・関西オフィス・中部オフィスでの実施となります。なお公式サイトには、希望する勤務地によっては求人を紹介できない場合がある旨も記載されています。
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atGP
身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳のいずれかの交付を受けていることが利用の条件とされています。手帳をお持ちでない方も、申請中の場合は利用できる可能性があるとされています。年齢や障害の種類による制限は設けられていません。オフィスは東京・大阪・名古屋の3か所ですが、相談方法はオンライン・電話・対面(オフィス)から選べるとされています。
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この記事では、どちらが優れているかという比較はしません。それぞれの特徴や向き・不向きを詳しく比べたい方は、障害者雇用での転職エージェントはどっちがおすすめ?dodaチャレンジとatGPを比較 をご覧ください。
登録したからといって、すぐに応募しなければならないわけではありません。まずは相談してみて、合わないと感じたら使わない、という判断でも構わないと思います。
まとめ
就労移行支援の卒業は、支援の終わりではありません。相談できる場所も、就職活動の窓口も、卒業後に残っています。
卒業の前後にやっておきたいことを、もう一度整理します。
- 卒業後の相談先を、在籍中に確認しておく
- 手帳・受給者証・必要書類を整理し、自分の場合の扱いを窓口で確かめる
- 訓練で分かった自分の特徴・対処法・必要な配慮を、セットで言葉にしておく
- 就職活動の窓口を一つに絞りすぎない
- 生活リズムと働く準備を、卒業後も小さく続ける
すぐにどこかへ登録する必要はありません。この記事を読み終えたときに、「次に確認することが1つ決まった」という状態になっていれば十分だと思います。
障害者雇用で働くことについて、もう少し前提から知っておきたい方は、障害者雇用で転職する前に知っておきたい5つのこと|就労支援10年の現場から もあわせてどうぞ。

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