この記事は、就労移行支援という仕事を10年やってきた私が、現場で感じてきたことを書いたものです。
「こうすれば必ず働き続けられる」というノウハウの話ではありません。むしろ私自身、最初は大きな勘違いをしていましたし、答えを持っていたわけでもありません。
ただ、10年のあいだに本当にたくさんの人と関わってきて、「働き続けられた人」と「途中でつまずいた人」を、近くでずっと見てきました。その中で、少しずつ見えてきたことがあります。
特定の誰かの話は出しません。個人が分かるようなことも書きません。あくまで、私が現場で感じてきた手ざわりのようなものとして読んでもらえたらと思います。
就労移行支援の現場で10年働いてきた
私は社会福祉士と精神保健福祉士の資格を持っていて、就労移行支援という仕事を10年続けてきました。簡単に言うと、なんらかの事情で働くことに不安や困りごとを抱えている人が、もう一度働けるようになるまでを、一緒に準備していく仕事です。
履歴書を一緒に書いたり、面接の練習をしたり、生活リズムを整える手伝いをしたり。やることはいろいろですが、いちばん多いのは「話を聞くこと」だったと思います。
正直、最初の頃はそれが少し物足りなく感じていました。何か特別なことをして、はっきり結果を出すのが支援だと思っていたからです。でも今は、その「ただ話を聞く時間」こそが、いちばん大事だったのだと思っています。
10年というと長く聞こえるかもしれませんが、振り返るとあっという間でした。最初の頃と今とでは、私の見え方はずいぶん変わりました。その変化こそが、この記事で書きたいことの中心です。
副業のブログでなぜこんな話をするのかというと、「働き続ける」というテーマは、福祉の現場だけの話ではないと感じているからです。会社員として働く私自身にも、副業を6年続けてきた私自身にも、ずっと重なってくるテーマでした。
私が最初に勘違いしていたこと
恥ずかしい話ですが、この仕事を始めたばかりの頃、私は「やる気のある人ほど働き続けられる」と思っていました。本人の意欲とか、頑張る気持ちとか、そういうものが大きいんだろうと。
だから当時の私は、つい「もっと頑張りましょう」「気持ちを強く持ちましょう」といった声かけをしていた気がします。今思うと、それは相手のためというより、私自身が安心したかっただけかもしれません。
でも現場にいるうちに、それが少しずつ違うと感じるようになりました。すごく前向きで、最初は誰よりも意欲的だった人が、ある日ぱたっと来なくなることがある。逆に、いつも不安そうで自信なさげだった人が、気づけば何ヶ月も働き続けていることがある。
「やる気」だけでは説明がつかない。むしろ、やる気だけに頼っている状態のほうが、もろいのかもしれない。そう思うようになったのが、私にとって最初の大きな気づきでした。
やる気は、燃料のようなものだと今は思います。あれば力になるけれど、それだけで走り続けるのは難しい。むしろ大事なのは、燃料が切れた日にどうするか、燃料が少ない日にどう歩くか、のほうでした。
働き続けられる人に共通していたこと
では、長く働き続けられた人には何があったのか。10年見てきて、いくつか共通していると感じたことがあります。あくまで私の主観なので、絶対の法則ではありません。
ひとつは、「調子が悪い日があることを、自分で分かっている」こと。毎日100点を目指すのではなく、「今日はしんどいから60点でいい」と自分に許可を出せる人は、結果的に長く続いていました。完璧を手放せる人、と言ってもいいかもしれません。
もうひとつは、「困ったときに、小さく相談できる」こと。これは意外でした。大きな問題を一人で抱え込まず、ささいなことでも「ちょっといいですか」と言える人。相談はむしろ強さなのだと、私は現場で教わりました。
そして三つめが、「自分なりのペースを持っている」こと。周りと比べて焦るのではなく、「私は私のペースでいく」と思える人。これは才能ではなく、時間をかけて身につけていくものでした。
面白いのは、これらが最初から備わっていた人は、ほとんどいなかったということです。多くの人が、つまずいたり戻ったりしながら、少しずつ身につけていきました。だから「今できていないこと」は、これからできるようになることでもある。私はそう考えるようになりました。
共通していたのは、どれも「派手な強さ」ではないということです。むしろ、自分の弱さやしんどさを否定せず、上手に付き合っている人ほど、長く続いていました。
意外と誤解されていること
働くことについて、世の中ではいくつか誤解があるように感じています。現場にいて、特にそう思うことを書いておきます。
ひとつは、「一度つまずいたら終わり」という誤解です。実際には、何度かつまずきながら、それでも少しずつ前に進んでいく人がほとんどでした。むしろ最初から何の問題もなく進む人のほうが珍しいくらいです。
もうひとつは、「強い人だけが働き続けられる」という誤解。これは前に書いたとおり、むしろ逆でした。自分の弱さを知っていて、それを隠さずにいられる人のほうが、しなやかに続いていました。
それから、「支援する側がすごいことをしている」という誤解。これは私自身が一番言いたいことかもしれません。私たちにできるのは、せいぜい少し背中を支えるくらいです。働き続けたのは、いつもその人自身でした。
私たち支援者がしているのは、舞台の主役を演じることではなく、足元を少し照らす照明のような役割だと思っています。歩くのは本人。私はその道を、ほんの少し見えやすくするだけです。
苦戦する人にも共通点はあった
成功した人だけを見ていても、本当のところは分かりません。むしろ私は、途中でつまずいた人や、苦戦した人から多くを学びました。
苦戦していた時期によく見られたのは、「一人で全部抱え込んでしまう」状態でした。しんどいのに「大丈夫です」と言ってしまう。本当はSOSを出したいのに、迷惑をかけたくない気持ちが勝ってしまう。これは責められることではなく、むしろ真面目な人ほど起きやすいことでした。
もうひとつは、「いきなり高い目標を立ててしまう」こと。最初から週5日フルタイムを目指して、数週間で力尽きてしまう。気持ちは痛いほど分かります。でも、そこを少しずつにできた人ほど、結果的に遠くまで行けていました。
大事なのは、苦戦していた人が「ダメな人」だったわけでは決してないということです。たまたまその時期に、無理をしすぎていただけ。条件が少し変われば、同じ人がぐっと続けられるようになる場面を、私は何度も見てきました。
だから私は、「うまくいかない=向いていない」とは思わないようになりました。やり方や環境、タイミングを少し変えるだけで、見える景色は変わります。
そしてもうひとつ感じていたのは、苦戦している時期の人ほど、本当はものすごく頑張っているということです。傍から見ると止まっているように見えても、本人の中では必死に踏ん張っている。その頑張りが外から見えにくいだけなのだと、私は何度も思い知らされました。
私自身も同じ悩みを抱えていた
ここまで支援する側の話のように書いてきましたが、正直に言うと、私自身もまったく同じ悩みを抱えてきました。
会社員として働きながら、「このままで大丈夫だろうか」とよく不安になります。副業を始めてからの最初の3年はほぼ0円で、何度も「向いていないんじゃないか」と思いました。完璧にやろうとして力尽きたことも、一人で抱え込んでしんどくなったことも、何度もあります。
つまり、現場で「働き続けられる人の共通点」として感じてきたことは、そのまま私自身に返ってくる言葉でもありました。完璧を手放す。小さく相談する。自分のペースを持つ。どれも、私がいまだに練習している途中のことです。
だから私は、支援している人たちに上から何かを教えていた、という感覚はあまりありません。むしろ一緒に、同じ課題に取り組んでいた仲間のような気持ちのほうが近いです。
この記事を書きながらも、私はまた自分に言い聞かせています。完璧にやろうとして力みすぎていないか。一人で抱えていないか。たぶん私は、これからもこの問いと付き合っていくのだと思います。
10年見てきて今思うこと
10年やってきて、今いちばん思うのは、「働き続けられるかどうかは、その人の強さの問題ではない」ということです。
続けられるかどうかは、自分の弱さやしんどさと、どう折り合いをつけられるか。完璧じゃなくていいと思えるか。少しだけ人に頼れるか。そういう、地味で目立たないことの積み重ねでした。
これは副業でも、たぶん同じです。一気に大きく稼ぐことより、しんどい日があっても細く長く続けられること。私が副業を6年続けてこられたのも、結局はそこだった気がします。
働き方も生き方も、たぶん「正解」はひとつではありません。誰かにとっての続け方が、別の誰かには合わないこともある。だからこそ私は、人と比べて落ち込むより、自分に合うペースを探すほうが大事だと感じています。
もしいま、働くことや続けることに不安を感じている人がいたら、伝えたいのはひとつだけです。「うまくできない自分」を責めなくて大丈夫だということ。10年見てきて、長く続けた人ほど、そこが上手でした。
完璧じゃなくていい。焦らなくていい。私もまだ途中です。一緒に、少しずつでいいんだと思います。
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