この記事は、精神保健福祉士として人の「働く不安」に関わってきた私が、では自分自身の不安はどうだったのか、を正直に書いたものです。
前に「働き続けられる人の共通点」という記事を書きました。あれは支援者として外から見てきた話でした。今回は逆で、支援する側なのに自分も不安だらけだった、という内側の話です。
うまく乗り越えた成功談ではありません。むしろ、いまだに不安は消えていません。それでも少しずつ行動を続けてこられた、その過程を書きます。
同じように「支援する側なのに自分も不安」という人や、「専門職なのにお金や将来が不安で情けない」と感じている人に、少しでも届けばいいなと思って書いています。
「不安に向き合う仕事」をしている私自身が不安だった
私は社会福祉士と精神保健福祉士の資格を持っていて、就労移行支援の現場で10年働いてきました。働くことへの不安を抱えた人と、毎日のように向き合う仕事です。
だからでしょうか、よく勘違いされます。「不安の専門家なんだから、自分の不安はコントロールできるんでしょう」と。正直に言うと、まったくそんなことはありません。
支援の場では落ち着いて話を聞けるのに、家に帰って自分の通帳や住宅ローンの残高を見ると、ふっと心臓が重くなる。人には「焦らなくて大丈夫」と言えるのに、自分のことになると簡単に焦る。そういう矛盾を、ずっと抱えてきました。
人の不安には冷静に向き合えるのに、自分の不安には飲み込まれそうになる。この「他人にはできるのに自分にはできない」という感覚は、たぶん福祉職に限らず、多くの人が経験のあることなのではないかと思います。
知識があることと、自分の感情をコントロールできることは、まったく別物でした。これは10年やってきて、骨身にしみて分かったことです。
むしろ、不安の仕組みを知っているぶん、自分の中の不安にも敏感だったのかもしれません。「あ、今これは過剰に心配しているな」と気づける。でも気づけたからといって、すぐに楽になれるわけではない。気づきと、心が落ち着くことのあいだには、けっこう距離がありました。
給料だけでは将来が不安だった
福祉の仕事は、やりがいはあります。でも、給料が高い世界かと言われると、正直そうではありません。私の手取りは28万円ほどで、ここから住宅ローンや子どもにかかるお金が出ていきます。
真面目に働いているのに、月末になると口座の残りを見て小さく息をつく。昇給があっても、物価が上がればすぐ消えていく。「このまま定年まで、この延長線でいいんだろうか」という思いが、消えませんでした。
まわりの同僚は、それなりに納得して働いているように見えました。だから余計に、自分だけが落ち着かないのかと思って、口に出せませんでした。今思えば、みんな同じように、言わないだけで何かしらの不安を抱えていたのかもしれません。
支援の現場では、お金の不安を抱えた人の相談にものってきました。でも自分のお金の不安は、誰かに相談するわけにもいかず、一人で抱えていた時期が長かったです。専門職だからこそ、弱音を吐きにくいところもありました。
家計簿をつけては、ため息をつく。節約できるところを探しては、これ以上どこを削るんだと立ち止まる。お金の不安は、頑張りだけではどうにもならない部分があって、そこがいちばんこたえました。
住宅ローンを抱えていたこと
40代になり、家を買い、住宅ローンを抱えました。家族と暮らす場所ができたのは嬉しいことです。でも同時に、長い年月にわたる返済という現実も背負いました。
「もし病気で働けなくなったら」「もし会社に何かあったら」。夜中にふと、そんな想像が頭をよぎることがあります。支援の仕事をしているからこそ、働けなくなることの大変さを身近に知っていて、よけいに不安になる面もありました。
知っているというのは、必ずしも安心にはつながりません。むしろリスクを具体的に想像できてしまうぶん、夜に考え込んでしまう日もありました。知識は、使い方を間違えると不安を増やす道具にもなる。そんなことを、自分の身で実感していました。
一つの収入だけにすべてを乗せている状態が、私にはどうしても心細く感じられました。会社という一本の柱だけで、この先ずっと家族を支えていけるのか。その問いが、副業を考えるきっかけのひとつになりました。
もちろん、副業を始めたからといって、住宅ローンの不安がすぐ消えるわけではありません。むしろ最初は時間も取られて、家族に申し訳ない気持ちもありました。それでも「何もせず不安だけ抱えている」よりは、少しでも動いているほうが、自分の気持ちが保てたのです。
精神保健福祉士なのに、自分の不安は簡単に消せなかった
ここがいちばん正直に書きたいところです。私は「不安との付き合い方」を学び、人に伝える側にいました。それでも、自分自身の不安はちっとも簡単に消えませんでした。
知識としては分かっています。不安は完全には消えないこと。消そうとするほど大きくなることもあること。だから「消す」より「付き合う」ほうがいいこと。頭では分かっているのに、いざ自分のこととなると、その通りにはできないのです。
一時期、自分を責めました。「専門職なのに情けない」と。でも、あるときから考え方を変えました。不安を感じるのは、家族を大事に思っているからだ。将来を真剣に考えているからだ。だとしたら、不安はむしろ自然な反応なのだと。
考えてみれば、何の不安も感じない人のほうが、むしろ危ういのかもしれません。不安があるから、備えようとする。動こうとする。そう捉え直してから、不安と自分の関係が、少しだけ楽なものになりました。
不安を敵だと思うのをやめてから、少しだけ呼吸がしやすくなりました。消そうとするのではなく、「不安があるなら、その分だけ小さく動いておこう」と思えるようになったのです。
この感覚は、支援の現場で出会った人たちからも教わったものです。不安をゼロにしてから動こうとすると、いつまでも動けない。でも不安を抱えたまま、ほんの少し動いてみた人は、少しずつ前に進んでいました。私はそれを、自分の人生でもなぞっていたのだと思います。
それでも少しずつ行動を続けた
不安は消えませんでした。でも、消えないなら、その横で何か動いておこう。そう思って始めたのが、副業でした。
特別なスキルがあったわけではありません。文章を書くのが得意だったわけでもない。ただ、会社以外に少しでも収入の種があれば、この心細さが和らぐかもしれない。その程度の、ささやかな期待からのスタートでした。
最初の3年は、ほとんど成果が出ませんでした。収入はほぼ0円。「やっぱり自分には向いていないのかも」と何度も思いました。不安を減らすために始めたのに、思うようにいかなくて、別の不安が増えるような時期もありました。
それでも振り返ると、その3年は無駄ではありませんでした。成果は0円でも、続ける習慣や、文章を書く力や、自分なりのペースは、確実に積み上がっていました。見えにくいだけで、ちゃんと前に進んでいたのだと、今は思えます。
それでも完全にはやめませんでした。理由は、大きな成功を狙っていなかったからだと思います。「今日できる小さなこと」を、できる日にだけやる。調子が悪い日は休む。そのくらいゆるく構えていたからこそ、細く長く続けられました。
面白いもので、これはまさに、私が支援の現場で「続けられる人」に共通していると感じたことそのものでした。完璧を目指さない。小さく動く。自分のペースを守る。人に伝えてきたことを、ようやく自分で実践し始めた、という感覚でした。
支援者として人に言うのは簡単でした。でも自分でやってみると、本当に難しい。続けることのしんどさも、成果が出ない時期の心細さも、身をもって味わいました。だからこそ今は、支援の場で「分かります」と言うときの重みが、前とは少し変わった気がしています。
不安と付き合いながら働くということ
今でも不安は普通にあります。お金のことも、将来のことも、健康のことも。たぶんこの先も、完全になくなることはないのだと思います。
でも昔と違うのは、不安があってもそこそこ動けるようになったことです。不安を全部解消してから動こうとすると、いつまでも動けません。だから私は、不安を抱えたまま、その横で小さく行動する、というやり方に落ち着きました。
精神保健福祉士として人の不安に関わってきて、最後に自分自身が学んだのは、たぶんこれです。不安は弱さの証ではない。大事なものがある証拠です。その不安を抱えながら、それでも一歩を出せたなら、それで十分なのだと思います。
立派に乗り越える必要なんてありません。不安に震えながらでも、その日できる小さな一歩を出せたなら、もうそれで前進です。私は、人にそう言ってきた言葉を、ようやく自分にもかけられるようになってきました。
もし今、働くことやお金のことで不安を感じている人がいたら、こう伝えたいです。不安が消えるのを待たなくて大丈夫。私も消えないまま、少しずつ動いています。一緒に、抱えながらでいきましょう。
このブログには、お金の不安や将来の不安について書いた記事も、副業を6年続けてきた記録もあります。同じように悩んでいる方に、何か一つでも持ち帰ってもらえたら嬉しいです。
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