心療内科や精神科で診断書を受け取ったあと、いちばん消耗するのは、実は手続きではありません。「これからどうなるんだろう」と、頭のなかで先のことを考え続けてしまう時間のほうです。
この記事は、休職の手続きを順番に説明する記事ではありません。診断書を受け取った今日の時点で、「結論を出さなくていいこと」と「最低限確認しておけばいいこと」を分けるための記事です。
就労支援の現場で10年、精神保健福祉士として働いてきて感じるのは、この時期に必要なのは情報の量ではなく、考えなくていいことを減らすことのほうだ、ということです。
診断書をもらった今日、決めることと決めなくていいこと
今日、結論を出さなくていいこと
- 退職するか
- いつ復職するか
- 今後どんな働き方をするか
- 転職するか
診断書を受け取ると、この4つがいっぺんに頭に浮かびます。そして、その日のうちに答えを出そうとしてしまうこともあります。
けれど、この4つはどれも、体調が戻ってからのほうが正確に判断できることです。
体調を崩しているとき、落ちているのは体力だけではありません。物事を比べたり、先のことを考えたりすること自体が負担になることがあります。その状態で出した結論は、あとから見ると「どうしてあんなふうに考えたんだろう」と思うことがあります。
今日は、この4つの答えを出さないままにしておいて大丈夫です。
今日、最低限確認しておくこと
一方で、休みに入るための事務的なことは、いくつか確認しておいたほうが後が楽になります。
- 診断書を誰に・どう提出するか
- いつから休む扱いになるか
- 休職中の給与について、誰に確認すればいいか
- 社会保険料の金額や支払い方法について、誰に確認すればいいか
この4つに共通しているのは、どれも「確認先を押さえる」だけでいいということです。
「休職中の給与がどうなるか」を今日理解する必要はありません。「それは誰に聞けばいいのか」が分かっていれば、今日はそこまでで十分です。
確認することと、決めることは違います。今日必要なのは前者だけです。
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「休職=無収入」ではない ── 傷病手当金という制度があります
休むことをためらう理由として、お金の不安はとても大きいものです。
ただ、健康保険には傷病手当金という制度があります。業務外の病気やケガの療養のために仕事に就くことができず、一定の要件を満たした場合に、健康保険から支給されるものです。
この記事では、制度が存在すること、そして今日その手続きを終わらせる必要はないこと、この2点だけお伝えします。
待期という考え方があります。仕事を休み始めた日から連続した3日間が待期期間とされ、その3日間そのものは支給の対象になりません。4日目以降の、仕事に就けなかった日が支給の対象です。この待期には有給休暇や、土日・祝日などの公休日も含まれます。給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。
支給される期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月とされています。以前は「支給開始日から1年6か月」という数え方でしたが、2022年(令和4年)1月1日から通算する形に変わりました。
金額の考え方は、支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均額を30で割り、その3分の2を乗じた額が1日あたりの目安になります。加入期間が12か月に満たない場合は、別の取り扱いになります。
今日、申請まで終わらせなくて大丈夫です
傷病手当金を受ける権利には、2年という時効があります。起算日は労務不能だった日ごとにその翌日とされているため、時効は1日ずつ進んでいきます。
これは急かすための情報ではありません。むしろ逆で、2年という幅があるからこそ、診断書を受け取った今日、申請まで終わらせる必要はないということです。
申請書には勤務先が記入する欄も、医師が記入する欄もあります。ひとりで完結するものではありません。
とはいえ後回しにし続けるものでもないので、体調が少し落ち着いた段階で、勤務先の担当者と、加入している健康保険(協会けんぽ、または健康保険組合)に確認してみてください。実際の申請時期や方法は、加入先や勤務先によって案内が異なります。
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社会保険料は、休職しても自動的にゼロにはなりません
休職に入ってから確認が必要になりやすいのが、社会保険料です。
休職している間も、健康保険や厚生年金の被保険者であることに変わりはありません。そのため、休職したからといって社会保険料の負担が自動的になくなるわけではありません。
ただし、いくらになるのか、いつ、どうやって支払うのか(勤務先が立て替えるのか、自分で振り込むのか、復職後に精算するのかなど)は、勤務先の規定や個別の状況によって異なり得ます。
ですので、今日確認しておくといいのは、次の2つだけです。
- 休職中の社会保険料はいくらになるのか
- いつ、どのように支払うのか
金額まで今日聞き出す必要はありません。「これは人事に聞けばいいことだ」と分かっているだけでも、あとで確認しやすくなります。
会社への伝え方は、一度に全部でなくていい
診断書を受け取ったあと、迷いやすいことの一つが、会社への伝え方です。
順番としては、まず診断書に何が書かれているかを確認するところからです。記載されている内容によって、伝えるべきことや必要な手続きが変わってきます。
そのうえで、提出先と提出方法を勤務先に確認します。人事に直接なのか、直属の上司を通すのか、原本を持参するのか郵送でいいのか。これは会社によって運用が違うので、想像で決めずに聞いてしまったほうが早いです。
どこまで事情を説明するか迷う場合も、担当者に「何を伝える必要がありますか」と確認して構いません。就業規則や休職手続きによって必要な情報は異なるため、一律にこうと言えるものではありません。
そして、一度の連絡ですべてを説明しようとしなくて大丈夫です。
診断書を出す。休む期間の目安を伝える。手続きについて教えてもらう。この3つは、同じ日の同じ電話で済ませなければいけないものではありません。
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今日やることは、ひとつだけ
長くなりましたが、今日やることは本当にひとつだけです。
診断書を、いつ、誰に渡すか。それだけ決めて、あとは休んでください。
退職するかどうかも、いつ戻るかも、これからどう働くかも、診断書を受け取った今日の時点ですべて決める必要はありません。体調が少し落ち着いてから、必要に応じて主治医や勤務先とも相談しながら、一つずつ考えていけばいいことです。
診断書に書かれる内容は人によって異なります。ただ、主治医が今の状態を踏まえて、休養や勤務上の配慮について医学的な判断を示すための書類でもあります。まずはそこに書かれている内容を確認して、今日必要な連絡だけ済ませたら、その先の結論まで急いで出さなくても構いません。
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